KUSHIRO National College of Technology, class in modern society

釧路高専 現代社会講座

専攻科2年 「技術者倫理」

● レポート作例

失敗を活かすには――みずほ銀行システム障害事件に学ぶ

鹿又大五

1)  みずほ銀行システム障害事件の概要  

 2011年3月14日、テレビ局が震災義援金への協力をよびかけたところ、みずほ銀行の某口座に振り込みが殺到。同口座の1日あたりの取引件数の上限を超え、夜間の一括処理が異常終了、一部振込みデータが欠落した。データの復旧に8時間を費やし、その影響で送信予定であった31万件の振込みも実行されなかった。16日朝にも義援金口座で一括処理が異常終了し、振込みの一部が見送信となった。問題解決のため18日から店外ATMやインターネットバンキングを、19日からすべてのATMを計画停止させた。すべての問題が解決したのは24日であった。

2) 事件が起こった原因

 システム障害特別調査委員会がまとめたシステム障害の報告書によれば30の不手際が重なってシステム障害の影響が拡大していた事実が判明した。本レポートでは中でも情報システムの使用や設定について取り上げる。銀行の会計処理を行うシステムを勘定系システムと呼ぶ。みずほ銀行で使われていた勘定系システムは稼働以来23年使い続けられてきたものである。新サービスの投入や法制度の対応のため、部分的に機能を変更した結果、勘定系システムの中身が複雑になってしまったことが今回の事件の原因となっている。 みずほ銀行の勘定系システムはプログラミング言語の一種であるCOBOLによって書かれている。復旧が遅れた原因としてCOBOLによって勘定系システムが書かれていることが考えられる。COBOLは勘定系システムには多く使われているが、現在のシステム開発やアプリケーション開発はJavaが主流である。そのためCOBOLを理解しているエンジニアが不足しており、その結果問題点の発見に手間取る、システムの仕様をシステム管理者が理解していないなどの問題が発生したものと考えられる。とくに勘定系システムのように会社ごとに処理手順が大きく異なるシステムの統合には多くの人月を要する。システム管理者は技術者としてこのような状況を的確に経営者に説明する責任があったと考えられる。

3) 自身が経験した失敗との関連

 研究用にプログラムを作成した際に機能を拡張する必要があった。その際により簡単に記述できる部分であっても手間がかかるために複雑に書いてしまうことがあった。研究に用いたプログラムは今後後輩が参考にする可能性もある。これはみずほ銀行でおこったシステムの障害と似た失敗である。みずほ銀行では勘定系システムを新たに作ることはコストがあることを気にしすぎた結果、障害が発生したときの損害や社会に与える影響を小さく考えてしまったことが原因である。私の失敗も自分の手間を減らすために後にプログラムを使う人のことを考えずにプログラムを作成したことは失敗であった。技術者倫理を学ぶこと今後技術者として働く上での守らなければならない倫理を実例として学ぶことができる【不整合:「~は~である」「~により~できる」等にするべき】。こういった過去の事例から教訓を得て、今後技術者倫理を重んじる技術者となるよう勉強をつづける必要性を強く感じた。     

※ ここに掲載した文章は,学生から提出のあったレポートの中から後進の参考になるであろうと思われるものを講義担当者が選び,文章表現について添削を施したうえで提示しているものです。筆者の見解を,講義担当者ならびに学校が承認しているものではありません。


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lastModified : 01/10/2012 07:36:42